カラダの中心部分の温度である深部体温は、細胞が最も働きやすい37度にいつも保たれている必要があります。
外気温が下がると、この深部体温を維持するために、手足や表皮の血管を収縮し血流を低下させて、体内の熱を逃がさないようにします。この状態が長く続くと、手足や表皮に温かい血液が運ばれなくなり、末梢の体温が下がって「冷え」を感じるのです。特に、「冷え」に敏感な人は、それほど寒くない環境でもこのような末梢の状態が起こりがちです。(図1)
ヒトはカラダを動かすときにも頭を使うときにも体内で常に熱を生みだしていますが日常生活が活動的でないと熱を作り出すチカラが弱まります。
また、胃腸の働きが弱いヒトは、消化・吸収能力が低下しているので、食べる量もおのずと減り、カラダの中で熱を作る力が弱まって、「冷え」になりやすい傾向があります。
「冷え」をそのまま放っておくと、血液の循環が悪い状態が続くため、肥満や下痢、肌荒れなど、さまざまな体調不良を引き起こす原因となります。
「冷え」は、冷える部分や症状によって、大きく5つのタイプに分けられます。自分がどのタイプに当てはまるのか、確認してみましょう。
監修:北里大学東洋医学総合研究所 臨床准教授、漢方鍼灸治療センター副センター長 伊藤剛先生
冷えを放置すると、いくつかのタイプが組み合わさって、冷えの症状がより重くなってしまうこともあります。
冷えの症状は、手足が冷える以外にも、さまざまな体調不良があります。冷えを感じないから大丈夫と思っているあなたも、実は隠れ冷えの可能性が・・・。冷えに関連する症状をチェックしてみましょう!
西洋医学では、「冷え」は「冷え性」と書き、病気ではなく「冷えに過敏な性質(たち)」とされています。
一方、東洋医学では、「冷え」は万病のもととなる「未病」と捉えられており、「冷え症」と書きます。「冷え」は体質だからと思って放っておくと、さらに別の症状を引き起こすこともあります。本人がカラダの「冷え」を苦痛に感じれば、その人は「冷え」だといえます。自分のカラダの「冷え」をしっかりと自覚することが大切です。
「冷え」の原因は、カラダが熱をうまく作れないことと、せっかく熱を作っても手足などカラダの隅々まで上手に運べないことの、主に2つが考えられます。
胃腸が弱いヒトやダイエットで食事制限をしているヒト、偏った食事や不規則な食事をしているヒトは、熱を作るエネルギー源が不足しています。また、運動不足のヒト、カラダを使う、頭を使うなどの日常生活で活動が活発でないヒトも熱を十分に作ることができず、カラダが冷えてしまいます。
筋肉はカラダの熱産生に重要な役割を果たしますが、女性は男性に比べて、筋肉量が少ないため、「冷え」になりやすい傾向があります。
体内で熱が十分に作られると、血液とともにカラダの隅々まで温かくなります。
しかし、せっかく体内で熱が作られても、血液循環が悪いと熱がカラダの隅々まで行き届かず、手足などの末端が冷えてしまいます。血液循環が悪くなる原因としては、貧血や低血圧、動脈硬化、姿勢の悪さ、運動不足などがあげられます。
「冷え」で悩む人は、カラダを外側から温めることに気をとられがちです。しかし、「冷え」のそもそもの原因は、カラダの内側で「熱をうまく作れない」「せっかく熱を作っても、手足などカラダの隅々までうまく運べない」ことにあります。
抜本的な「冷え」解決の秘訣は、代謝を高めることです!これにより、カラダで熱を作る力が高まり、それがカラダの隅々まで運ばれるようになりカラダ全体が温まるのです。(図2)
エネルギー代謝とは、食事から摂取した栄養素を使って、呼吸や体温維持、運動などあらゆるヒトの生命活動に必要なエネルギーを作り出すことです。そして、そのエネルギーのかなりの部分が熱を作りだすことに使われているのです。
エネルギー代謝の内訳は、何もせずにじっとしていても、生命を維持するために必要な「基礎代謝(約60%)」、食事を消化・吸収する際に生じる「食事誘発性熱産生(約10%)」、歩行やスポーツなど「身体活動による代謝(約30%)」になります。