学術情報

カプシエイト

2007.10.16

カプシエイト類に米国人における腹部脂肪率の低下効果を確認

−2007年10月20日から開催されるNAASO2007(北米肥満学会)にて発表−

メリーランド大のSOREN メリーランド大のSOREN SNITKER博士を中心としたグループは、カプシエイト類の摂取により、米国における肥満傾向〜肥満者に対して(BMI25-35)、腹部脂肪率が低下することを明らかにしました。これらの研究成果は、2007年10月20-24日に開催されるNAASO2007(北米肥満学会、アメリカ合衆国ニューオリンズ)で発表する予定です。また、味の素(株)健康基盤研究所(所長:近藤信雄、神奈川県川崎市川崎区)は、その作用メカニズムについても研究を進め、その成果を2007年9月10-12日に行われたNeuro2007(日本神経科学学会、横浜)にて発表致しました。

※カプシエイト類とは
京都大学大学院農学研究科の矢澤教授により自殖選抜された辛くないトウガラシ中に含まれる成分の総称。トウガラシの辛味成分であるカプサイシンと類似の構造を持つが、辛味はほとんど感じられない。その一方、カプサイシンと同様に、エネルギー消費量増加、体脂肪低減、体重減少作用などの生理機能があることが報告されています。

【研究内容の詳細】

▼発表演題
カプシエイト類として6 mgをソフトカプセルにて米国の肥満傾向〜肥満者(BMI25-35)に、1日朝、夕2回に分けて12週間に渡って摂取していただいたところ、内臓脂肪組織量と相関があることが知られている腹部脂肪率が有意に低下しました(図1)。今回の被験者で見られた腹部脂肪率の減少には、約470分の歩行運動と同じカロリーの消費が必要です。

さらに、男性被験者を対象とした呼気ガス分析の結果、安静時のエネルギー代謝量と脂質酸化量の増大傾向が認められ、前述した腹部脂肪率の低下のメカニズムにこれらが関与している可能性が示唆されました(図2)。

また、ラットを用いたメカニズム研究により、カプシエイトを経口投与することによって、褐色脂肪組織における交感神経の持続的な活性化が引き起こされることが明らかとなりました(図3)。さらに、詳細な検討の結果、カプシエイトの交感神経の活性化は全身に一様に起こるものでなく、エネルギー代謝に関与しているとされる組織(褐色脂肪組織)に選択的であることがわかり、トウガラシの強力な辛味成分である
カプサイシンと比較して、その選択性・優位性が明らかになりつつあります。

味の素株式会社では、今後もカプシエイト類についての研究を継続していきます。将来的にはカプシエイト類の機能を活用し、エネルギー代謝を改善することで生活者の健康維持に大きく貢献していきたいと考えています。

▼発表の題名・発表者
<NAASO2007>
●Novel Capsinoids Treatment Associated with Loss of Abdominal Fat in Humans - Possible Pharmacogenetic Implications
SOREN SNITKER1), YOSHIYUKI FUJISHIMA2), ALAN SHULDINER1), HAIQING SHEN1), SANDY OTT1), YASUFUMI FURUHATA2), HITOSHI SATO2), MICHIO TAKAHASHI2)
1) University of Maryland School of Medicine
2) 味の素株式会社

<Neuro2007>
●カプシエイトは褐色脂肪組織の交感神経活動を亢進する
安居昌子1), 小野郁1), 原佳子1), 永島計2), 高橋迪雄1)
1) 味の素株式会社 健康基盤研究所
2) 早稲田大学人間科学学術院

●カプシエイトは末梢交感神経系を局所的に活性化する
小野郁, 原佳子, 安居昌子, 高橋迪雄
味の素株式会社 健康基盤研究所

▼用語説明
<BMI>
Body Mass Index(体格指数)の略で、肥満の判定方法に広く使われている値です。体重(kg)を身長(m)の二乗で割ったもので、日本では、25以上で肥満と判定されますが、米国では、25以上で肥満傾向、30以上で肥満と判定されます。

<安静時エネルギー消費量>
やすらかで落ち着いた状態で測定されたエネルギーの消費量のことです。体温の維持、心臓等の内臓の動き、呼吸等、生きていくために必要な基本的なエネルギー量と考えられています。意味としては、基礎代謝量と近いですが、測定方法が異なるため、少し高めの値となります。

<脂質酸化量>
体内で脂質が酸化された量のことです。体内で消費された酸素量と産生された二酸化炭素量から求められます。脂質が酸化されるということは、脂質が燃焼されてエネルギーを消費していることを現しています。

<褐色脂肪組織>
脂肪組織の一種ですが、通常の脂肪組織(白色脂肪組織)と異なり、エネルギーを消費して熱を産生する機能が発達しています。

<交感神経>
様々な臓器の働きを無意識下で制御し、エネルギー代謝や呼吸・循環などの恒常性を保っている自律神経の一種で、活性化するとエネルギー消費量を増やすと言われています。