学術情報

カプシエイト

2010.9.12

カプシエイト類の摂取による女子大学生の「冷え」改善効果について

−2010年9月10-12日 第57回日本栄養改善学会学術総会にて発表−

東京家政学院大学の海野知紀准教授と味の素(株)健康基盤研究所(所長:近藤信雄、神奈川県川崎市)は、カプシエイト類を摂取することにより、女子大学生の冷えスコアおよび「冷え」によって低下すると推察されるQOLに関するスコアが改善することを明らかにしました。この研究成果 は、2010年9月10-12日に開催される第57回日本栄養改善学会学術総会(埼玉県坂戸市)で発表する予定です。

※ カプシエイト類
京都大学大学院農学研究科の矢澤教授により自殖選抜された辛くないトウガラシ「CH-19甘」に含まれる新規天然成分の総称。トウガラシの辛味成分であるカプサイシンと類似の構造を持つが、辛味はほとんど感じられない。その一方、カプサイシンと同様に、エネルギー消費量増加、体脂肪低減、体重減少作用などの生理機能があることが報告されている。

発表骨子は、以下の通りです。

【発表演題】
女子学生の「冷え」の自覚に対するカプシエイト含有食品の影響
海野知紀1)、大平琢哉2)
1)東京家政学院大学現代生活学部 2)味の素(株)健康基盤研究所

<背景>
「生活習慣や社会環境の変化に伴い、「冷え」を訴える方の増加が指摘されています。「冷えは万病の元」とも言われ、慢性的に「冷え」の状態が続くと様々な不定愁訴も誘発されると考えられています。
一方、トウガラシは漢方で「体を温める食品」に分類されており、辛くないトウガラシ「CH-19甘」から抽出されたカプシエイト類の摂取は、エネルギー代謝を亢進させたり、体温の低下を抑えたりすることがこれまでの研究で明らかになっています。
今回、「冷え」に悩む女子大学生を対象に「冷え」の自覚症状について調査票を用いて評価し、カプシエイト類摂取の「冷え」に対する有用性について検討いたしました。

<方法>
東京家政学院大学に在学する女子学生の中で、冷え症の診断基準に基づき「冷え症」と判断され、かつ試験に参加の意思のある者を被験者としました。カプシエイト類3mgをソフトカプセルにて2週間継続摂取していただき、試験の開始時と終了時に冷えスコア(冷え自覚スコア、冷え関連スコア)およびQOL(6カテゴリー、60項目)について調査票を用いて評価しました。

<結果>
カプシエイト類摂取の前後で比較すると、冷え自覚スコアおよび冷えスコア(冷え自覚スコアと冷え関連スコアの合計)に改善傾向が見られました(図1)。
また、6カテゴリー(身体症状・快適感・社会的活動・認識能力・生活満足度・感情状態)について、60項目にわたるQOLアンケートを行ったところ、4つのアンケート項目において統計的に有意な改善が見られました(図2)。
これらのことより、カプシエイト類の摂取が「冷え」の改善に有効で、また「冷え」によって低下すると推察されるQOLの改善につながる可能性があると考えられます。

図1の説明:「冷え」の自覚のある女子大学生に対してカプシエイト類を2週間摂取させると、摂取前と比較して冷え自覚スコアおよび冷えスコア合計に改善傾向が示された。

図2の説明:カプシエイト類の継続摂取により、QOLに関する4つのアンケート項目において統計的有意な改善が見られた。

<まとめ>
今回の試験により、カプシエイト類を摂取することで女子大学生の「冷え」の自覚に関するスコアおよびQOLに関するスコアが改善することが明らかになりま した。この「冷え」に作用するメカニズムとしては、これまでに報告されているエネルギー代謝の亢進作用や体温低下抑制効果によるものと推察されます。

▼ 用語説明
≪冷えスコア≫
秋田赤十字病院の太田孝博医師(婦人科ならびに漢方外来)が開発した「冷え」を評価するための質問票(アンケート)で、15項目の質問から構成されます。
「冷え」およびそれに関連する事柄についてその程度を聞き、0-100点でスコアリングします(冷え自覚スコア:5項目40点、冷え関連スコア10項目60点)。

≪QOL≫
QOL(Quality of Life)は「生活の質」などと訳されますが、その意味は使われる分野・領域などによって異なります。今回の研究では、身体的・心理的および生活状態を表 すものとし、文献を基に6カテゴリー(身体症状・快適感・社会的活動・認識能力・生活満足度・感情状態)の60項目にわたる質問票を作成し、QOLの評価 に用いました。

QOLアンケート質問内容(各カテゴリー100点)

  身体症状 「めまいがする」「食欲がある」など31項目
  感情状態 「くよくよしている」「根気がない」など11項目
  快適感 「憂鬱になることがある」「元気がある」など6項目
  社会的活動 「無口である」「人に会うのがおっくうである」など4項目
  認識能力 「物忘れしやすい」「決断力がある」など4項目
  生活満足度 「有意義に過ごしている」「毎日目標を持っている」など4項目