学術情報

カプシエイト

2010.4.23

辛くないトウガラシの新規成分カプシエイト類の1つ ジヒドロカプシエイト※1の超低カロリーダイエット下における食事摂取後の熱産生※2の増加効果

2010年4月27日 Experimental Biology 2010にてその成果を発表

 味の素株式会社(社長:伊藤雅俊 本社:東京都中央区)と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のDavid Heber博士を中心としたグループは、辛くないトウガラシの新規成分であるカプシエイト類の機能研究を推進してきました。この度、米国において肥満者を対象にダイエット下のエネルギー代謝量に対するジヒドロカプシエイトの影響に関する試験を実施し、ジヒドロカプシエイトの摂取によって<食事摂取後の熱産生>が増加することを明らかにしました。この研究成果は、2010年4月24日から開催されるExperimental Biology 2010(米国栄養学会等の共同開催学会、アメリカ合衆国アナハイム)で発表される予定です。

 ヒトのエネルギー代謝は、<基礎代謝>、<食事摂取後の熱産生>、<身体活動によるエネルギー代謝>に分けられます。これまでの国内外の試験結果から、カプシエイト類の4週間連続摂取により基礎代謝量を1日
約50kcal増加させることがわかっています。この度、肥満大国と呼ばれる米国で肥満治療や肥満予防策の1つとして食事による体重管理に注目が集まる中、4週間にわたる超低カロリーダイエット(食事制限)とジヒドロカプシエイトの併用による、減量下における<食事摂取後の熱産生>への効果を検討するため、以下の試験を実施しました。

●試験内容:
  約4週間にわたる超低カロリーダイエット試験を実施。
具体的には、液状プロテイン食を活用し、1日の摂取カロリーを800kcal(プロテイン120g)に抑え、
ダイエット開始から4週間目(28日目)の朝食(400kcal・プロテイン60g)後に、エネルギー代謝量(食事摂取後の熱産生)を測定(無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験:液状プロテイン食にジヒドロカプシエイト[3mg、9mg]を加えたもの、もしくはプラセボ、のいずれかを4週間摂取)。
 
●試験結果:
  試験を完遂した33名(プラセボ:9名、ジヒドロカプシエイト3mg:11名、同9mg:13名)の結果解析により、プラセボ群と比較してジヒドロカプシエイト摂取群で4週間目の<食事摂取後の熱産生>における有意な増加を認めた(P<0.05)。その増加はジヒドロカプシエイトの摂取量に依存して大きくなった。
また、呼吸商※3は、プラセボ群で食事後に上昇が見られたが、ジヒドロカプシエイト群でその上昇は認められなかった。すなわち、ジヒドロカプシエイト群で、脂肪をより消費している可能性を示している。
 
(上図)4週間にわたる超低カロリーダイエット後の除脂肪体重にて補正した食事摂取後の熱産生の変化※4。ジヒドロカプシエイトを摂取した群は、摂取していない対照群と比べて、有意なエネルギー代謝量の増大を示した
(*;P<0.05)。
   今回の研究で、カプシエイト類の1つであるジヒドロカプシエイトが、4週間にわたる超低カロリーダイエット下での<食事摂取後の熱産生>を増加させ、呼吸商の上昇を抑制することが明らかになりました。これにより、カプシエイト類が基礎代謝量を増加させるというこれまでに得た知見に加え、<食事摂取後の熱産生>も増加させるという新たな知見を得ることができ、カプシエイト類が体重管理に有用であることが示唆されました。
 当社では、本研究結果が、食事制限による減量法の問題点(リバウンド含む)をカプシエイト類継続摂取により緩和することができることを示唆していると考え、今後の更なる研究を続けていく予定です。

【参考資料】

※1:<ジヒドロカプシエイト>
カプシエイトと同様、カプシエイト類に属しており、トウガラシの辛味成分であるカプサイシンと類似の構造をしていますが、辛味はほとんど感じられません。京都大学大学院農学研究科の矢澤教授により自殖選抜された辛くないトウガラシ中に含まれています。ジヒドロカプシエイトを含むカプシエイト類は、カプサイシンと同様に、基礎代謝量の増加(1日約50kcalの代謝アップ)、体脂肪低減、体重減少作用などの生理機能があることが報告されています。

※2:<食事摂取後の熱産生>
食事を摂った時に上昇するエネルギー代謝量のことです。食事を摂ると体内に吸収された栄養素が分解され、その一部が体熱となって消費されます。そのため、食事をした後は安静にしていてもエネルギー代謝量が増えます。
(ヒトのエネルギー代謝は、<基礎代謝>、<食事摂取後の熱産生>、<身体活動によるエネルギー代謝>に分けられます)

※3:<呼吸商>
体の中で栄養素が分解されてエネルギーに変換するまでの酸素消費量に対する二酸化炭素排出量の比率のことです。栄養素によってその比率が変わるために、体の中でどの栄養素が使われているかを表しています。
この値が低くなると、脂肪がより使われていることになります。

※4:(発表の題名・発表者)
Effects of dihydrocapsiate on diet-induced thermogenesis following 4 weeks of very low calorie dieting.
T. Y. Amy Lee, Alona Zerlin, Gail Thames, Zhaoping Li, and David Heber
UCLA Center for Human Nutrition, David Geffen School of Medicine at UCLA, Los Angeles, California USA