学術情報

カプシエイト

2007.5.20

カプシエイト類に肥満モデルマウスのインスリン抵抗性を改善させる効果があることを確認

- 第61回日本栄養・食糧学会で発表 -

味の素(株)健康基盤研究所(所長:高橋迪雄、神奈川県川崎市川崎区)は、カプシエイト類の糖・脂質代謝異常の改善効果について研究を進め、カプシエイト類が肥満モデルマウスのインスリン抵抗性を改善させる効果があることを確認し、第61回日本栄養・食糧学会(2007.5.17~20、京都府)で発表致しました。

※カプシエイト類とは
京都大学大学院農学研究科の矢澤教授により自殖選抜された辛くないトウガラシ中に含まれる成分の総称。トウガラシの辛味成分であるカプサイシンと類似の構造を持つが、辛味はほとんど感じられない。その一方、カプサイシンと同様に、エネルギー消費量増加、体脂肪低減、体重減少作用などの生理機能があることが報告されています。

発表骨子は、以下の通りです。

▼発表演題
「カプシエイト類の摂取は食事誘発性肥満モデルのインスリン抵抗性を改善する」
発表者 味の素(株) 健康基盤研究所 降籏 泰史、小野 郁、笹原 育子、佐藤 斉、高橋 迪雄

<研究の背景>
これまでの研究により、カプシエイト類は、肥満の予防・改善につながるエネルギー代謝亢進作用等を有していることが明らかになっております。肥満は、種々の糖・脂質代謝異常を引き起こすリスクファクターとして認識されていることから、本研究では、食事誘発性肥満モデルマウスを用い、糖・脂質代謝異常に対する効果について検討致しました。さらに、その作用メカニズムを解明することを目的として、血中アディポネクチン濃度と関連遺伝子発現の検討も併せて行いました。

<試験方法>
マウスに、脂肪を多く含んだ食餌(30%脂肪食)とその食餌にカプシエイト類を0.01%添加したものを12週間与え、体重及び脂肪組織・骨格筋・肝臓重 量を測定致しました。また、採取した血液を用いて、血糖値、トリグリセリド、遊離脂肪酸及び各種ホルモン等の測定を行いました。さらに、骨格筋の脂質代謝 に関する影響を調べるために、関連遺伝子の発現を、リアルタイムPCR法を用いて調べました。

<試験結果>
カプシエイト類を高脂肪食に0.01%添加することによって、体重、脂肪組織重量が有意に減少致しました(図1)。さらに、肥満になることによって生じた 血中のインスリン濃度の上昇とアディポネクチン濃度の低下が、カプシエイト類の摂取によって解消されました(図2)。また、骨格筋中の脂肪酸化に関連する 遺伝子の発現に対しても、改善が認められました。

<結論>
カプシエイト類に、肥満モデルマウスに対して抗肥満効果とインスリン抵抗性の改善効果があることが示唆され、インスリン抵抗性改善効果に、アディポネクチンが関与している可能性が示されました。

※インスリン抵抗性とは
血糖値を低下させる作用を有するホルモンであるインスリンの作用が減弱してしまうことです。肥満は、インスリン抵抗性を引き起こすことが知られており、この症状が進むと血糖値を制御することができなくなり、糖尿病の発症へとつながってしまいます。

※アディポネクチンとは
脂肪細胞から分泌されるホルモンの一種で、近年、インスリン抵抗性を改善させることが明らかとなり、肥満とメタボリックシンドロームをつなぐホルモンとして注目を浴びています。