DHAやEPAはオメガ3系脂肪酸と呼ばれ、まぐろやかつおなど青魚の脂肪に豊富に含まれている脂肪酸です。脂肪酸には、常温で固まりにくい不飽和脂肪酸と固まりやすい飽和脂肪酸があり、DHA・EPAなどのオメガ3系脂肪酸は不飽和脂肪酸にあたります。
また、DHA・EPAはカラダのなかで作り出すことが難しいため食事から摂取するしかない必須脂肪酸です。体内の必須脂肪酸の量が少なくなっても、すぐに生命の危機にさらされるわけではありません。しかし、脳や神経細胞、目の網膜などの細胞膜の重要な構成成分であるDHA・EPAが不足すると、これらの臓器や細胞の機能に影響を及ぼす可能性があります。また、DHA・EPAには血液ドロドロを予防する作用もあり、将来の健康を維持する上で十分に摂取しておきたい成分です。
日本人の食生活は欧米化が進み、魚の摂取量が減少しています。70年代から80年代にかけては、1人あたりの年間の魚介類消費量が35kgを超えていたこともありますが、現在では30kgにも満たないレベルとなっており、厚生労働省では、オメガ3系脂肪酸の摂取目標量を定め、積極的に摂取することを推奨しています。(図2)
現在の食生活をみると、炎症促進性のあるオメガ6系脂肪酸が過多となる傾向のため、逆作用を持つオメガ3系脂肪酸の摂取が推奨されていますが、中でも、DHA・EPAについてはその機能性や有用性が数多く明らかになっていることから、1日1g以上を摂取することが望ましいとされています。
しかし、その摂取量は各年代別で足りていない状況にあります。(図3)
毎日の食事の中で、1日1g以上のDHA・EPAを青魚から摂取しようとすると、かなりの量を食べ続けなくてはいけません。(図4)しかも、調理方法によってDHA・EPAは著しく減少してしまいますので、十分な量を摂取しようとするのは困難と言えます。例えば、「焼く」、「煮る」場合は約2割、「揚げる」場合は約6~7割が減少してしまいます。
ところで、DHAの起源をご存知でしょうか?DHAといえば魚をイメージする方が多いようですが、DHAを作り出しているのは、実は海藻です。その海藻を動物プランクトンが食べ、その動物プランクトンを魚が食べることによって、魚の脂肪の中にDHAが蓄積されていきます。
海藻類は一つの細胞からできている単細胞生物です。海洋には、DHAを合成することのできる海藻類が生息しています。その海草類は光合成を行い、そのエネルギーでDHAなどの必要な栄養素を作り出しています。また、光合成を行うために光のエネルギーを捉える光受容体の主要な構成成分は、脂肪酸、主にDHAとなっています。
DHAは、子どもの脳、目の発達をはじめ、大人では血液ドロドロの予防や脳の機能、記憶力の維持をサポートし、幅広い年齢層で重要な栄養素として、世界中で需要が高ると予測されます。海藻由来のDHAには、魚などの海洋資源ではまかないきれない需要に対応できる可能性があると期待されています。
さまざまな健康効果が期待されるDHA・EPAは、子どもから成人・高齢者に至るまで、健康でいきいきとした生活をおくることをサポートしてくれます。育ちざかりの子ども、そして、いつまでもいきいきと元気に過ごしたいと願う方にとっては、日ごろの食生活を見直し、積極的にDHAやEPAを摂取していくことが重要と言えます。