学術情報

アミノ酸“シスチン”と“テアニン”

2007.06.01

シスチン/テアニン食品が高齢者のインフルエンザワクチン接種後の抗体産生を増強することを確認

−2007年日本感染症学会で発表−

名古屋市厚生院の宮川浩一第2診療科部長を中心としたグループは、シスチン/テアニン食品が免疫力の低下した高齢者においてインフルエンザワクチン接種後の抗体産生を増強することを確認いたしました。その研究成果を2007年日本感染症学会(2007年4月10日−11日、京都)で発表しました。

発表骨子は、以下のとおりです。

▼発表演題
2007年日本感染症学会
高齢者におけるシスチン/テアニン投与がインフルエンザワクチン接種後の抗体価におよぼす影響
宮川 浩一 1)、林 嘉光 1)、 前田 章子 2)、加瀬 哲男 3)
1) 名古屋市厚生院内科、2) 大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学 、3) 大阪府立公衆衛生研究所

<研究の背景>
加齢とともに免疫応答が低下し、インフルエンザワクチンに対する反応も弱くなることが知られています。一方、アミノ酸の一種であるシスチンとテアニンは抗原※1刺激に対するIgM, IgG抗体※2産生を増加させることが味の素(株)健康基盤研究所における動物を用いた試験により証明されています。本研究によって、シスチン/テアニン食品が免疫力の低下した高齢者におけるインフルエンザワクチン接種後の抗体産生を増強することを明らかにしました。また、シスチン/テアニン食品が安全であることも確認いたしました。

※1抗原とは、
細菌やウイルス、空気中の塵、花粉などの異種蛋白をいいます。生体内に入ると抗体を形成させます。
※2IgM, IgG抗体とは、
抗体の種類で形が少し異なり、IgG, IgM, IgA, IgEなどがあります。

<実験方法>
名古屋市厚生院に入所する高齢者を対象とし、無作為にシスチン/テアニン食品摂取群(n = 32)と対照食品摂取群(n = 33)に分けて、各群において当該食品を14日間摂取しました。摂取開始前後に問診と採血を行い、被験食品摂取による臨床症状の変化の観察および安全性の評価を行いました。被験食品摂取終了後にインフルエンザワクチンを接種し、ワクチン接種前後におけるAソ連型(A/New Caledonia; H1N1)、A香港型(A/New York; H3N2)、B型(B/Shanghai; B)に対する抗体価※3を測定しました。

※3抗体価とは、
ウイルスや細菌などが感染した事により身体が反応してつくり出した抗体の血中のレベルを示します。インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3つの型があり、A型はAソ連型、A香港型などの亜型に分けられます。現行のワクチンにはAソ連型、A香港型、B型の抗原が含まれています。

<試験結果>
インフルエンザワクチン接種により、シスチン/テアニン食品群、対照群ともに抗体価の上昇が認められました。ワクチン接種前後における抗体価の上昇量には両群に差は認められませんでした。しかし、ワクチン接種前の抗体価が40倍未満※4の症例について検討したところ、シスチン/テアニン食品群では対照群と比較して高率に抗体価が40倍以上に上昇しました(図1)。また、高齢や栄養状態が悪いと免疫力が低下して抗体を産生する能力が衰えることが知られていることから、身体の栄養状態を示す血中の指標などを用いて層別解析を行ってみました。その結果、より高齢、低タンパク質、低アルブミン、低白血球数および昨シーズンのワクチン接種なしの例において、シスチン/テアニン食品摂取の効果が顕著であることがわかりました(図2)。さらに、これらのシスチン/テアニン食品摂取によるワクチン接種後の抗体価上昇の増強効果は、いずれのインフルエンザウイルスの型においても認められました。一方、シスチン/テアニン食品摂取による自・他覚症状、臨床検査成績に異常が認められなかったことから、シスチン/テアニン食品は安全であることがわかりました。

※4抗体価40倍未満とは、
インフルエンザウイルス感染に対して抵抗力が低い状態を示し、この値が40倍以上であると感染抵抗力を保持していると言われています。

<結論>
シスチン/テアニン食品の摂取は、抗体価が低い高齢者においてインフルエンザワクチン接種による抗体価の上昇作用を増強させることが明らかとなり、この効果は栄養状態の低い高齢者において顕著であることがわかりました。